ご飯の時に攻撃的になる犬

5歳を過ぎたころから、散歩の後でごはんを食べる際に、なかなか食べ始めないことが増えてしまったというトイプードルの『しょうたろう』。

最近ではうなって食べ散らかし、最後には飼い主さんに噛みつくようになってしまったそうです。ごはんを地面に置いておいて食べ終わったとしても、器を下げようとすると攻撃的になる、ということで相談がありました。

私は出張トレーニングの仕事をしていますが、この問題で困っている犬が多いと感じます。

ふだんの生活ではほとんど問題ないそうなのですが、ごはんのときにとても攻撃的になるので、飼い主さん(お父さん)はしょうたろうを飼い続けることに対して不安を感じ始めていました。外飼いなので接する時間は短く、仕事をしているので日中の時間がそれほど取れないことなどもあり、そういった状態でも改善できるのか、悩んでいたとのこと。

犬の問題行動の多くは、「6ヵ月齢を過ぎたあたりから気になり出し、だんだん顕著になっていき、少し和らいだかと思ったら2歳くらいにピークを迎え、その後はだんだん落ち着いてくる」という大まかな流れがあるように思います。

それが5歳から急にとなると、何か特別なきっかけがあったかもしれません。飼い主さんに、またはしょうたろう自身、彼を取り巻く環境、飼い主さんの生活などに何か変わったことが起きなかったか聞いてみたところ、ちょうどそのころにしょうたろうが中耳炎にかかり、通院するようになったことがわかりました。

犬が痛みや不快感を感じているときに、近づいたりふれようとすると、攻撃的な態度を取る場合があります。野犬などを保護する際には、もし犬がケガをしていたら素手でさわったりしないようにと言われます。痛みがある場合、犬は激しく噛むことが多いからです。

そう言えば、私が大学生のときに実家で飼っていた犬が、かなり良くない状態だと連絡を受け、帰宅したときのことです。犬小屋の下にもぐり込んでいた愛犬に声をかけると、うれしそうにしっぽを振ってくれたのですが、なでようと手を伸ばしたところ、初めて鼻にしわを寄せてうなられました。そのときはとてもショックでしたが、今思えば、相当な痛みや不快感があったのだろうと思います。

しょうたろうのケースも、もしかしたら耳の不快感でイライラしていたのかもしれません。もともと器に関しては所有欲が強く出やすい犬種でもあるので、そんなときに器に近づかれたためにうなってしまったのかもしれません。

飼い主さんとしては、愛犬がうなるという行動はとても良くないことで、叱るべきこと。ここで引いてしまっては犬に負けてしまう、と思った部分もあったようで、とにかく叱って何としてでも器を取らせるよう、しょうたろうと闘い始めてしまったのです。

相談申し込みのメールをくれた前の日の夕方、散歩から戻っていつものようにごはんを与え、器を下げようとするとうなり、あまりにも激しかったのでついに器を下げることができなかった、ということでした。しかし、次の日の朝は器を下げてもとくに気にする様子はなかったそうです。

このケース、最初は私も、器を守るという所有からくる攻撃性だと思っていました。ところが、お嬢さんが器を下げようとしても、しょうたろうは怒らないのだそうです。その話を聞いて納得しました。

このケースは「愛犬が怒って器を下げさせない」のではなく、「愛犬が怒ってしまい、器を下げられない人がいる」という問題なのです。この2つは、似て非なるもの。そうなると、原因は所有ではなくなります。所有が問題なら、誰が下げても怒らなければ成り立ちません。怒られてしまう人の行動に原因があるのです。

そこでさらに詳しく話を聞くと、しょうたろうが怒るのは、散歩から戻って庭につなぎ、器にフードを入れて地面に置いたとき。緊張感が走り、しょうたろうが身がまえてうなり始める、という場面に限るようで、少し時間が経てば器は下げられるとのこと。

しょうたろうのごはんは、毎日朝夕、散歩から帰ってから、つながれて犬小屋の前で与えられていました。

 

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